虚無

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キングオブコント2021個人的感想

※個人的見解です

 

今年は空気階段がとるだろうと思っていたけど、なぜかあの赤いジャケットを着て、トロフィーを持っている2人の姿を想像することをしなかった。

 

だから優勝して、あの赤いジャケットを着ている人を見て、あまりに似合わなくて、彼らがこれまであまりにも「成功」という言葉から遠いところで戦い続けていたことに気付いた。

 

たぶんそれは彼らがお笑いにおいて、人生において、「負けている役」みたいなのをしているところを私が見ていたからだと思う。空気階段って私にとってはそれだけ「負け」が似合う人たちだった。

 

所謂社会不適合者で、陰キャで、人生があまりうまくいってないようなキャラクターが好きだった。なんとなく自分と重ねられる存在の2人が、それでもただ面白いことをやっているのがずっと羨ましかった。人生を上手く進めるための能力を、お笑いに全振りしちゃた2人を見てると、自分の得意なことを活かして生きるのっていいなって、そう思える数少ない存在だった。

 

空気階段のコントが面白いのは知っていたんだけど、1本目の火事のコントは初見で、去年の何倍も面白くて、ただただテレビの前で泣いてしまった。

 

ああ、優勝しに来たんだ。ついに彼らが優勝するステージが用意されたんだと、そう思った。神様は空気階段を見捨てなかったんだ。

 

去年、「恋の尊さを伝えたくて」と水川かたまりが言った。

 

M-1は、その日に爆笑を搔っ攫ったやつが勝ちだ。そこに古参も新参もラストイヤーも関係ない。

 

だけど、私はキングオブコントにおいては少し、ほんの少し違うと思っていて、「優勝しなきゃいけない理由」が強い人たちが優勝してくれたらいいと思う。

 

2人の「これがラストイヤーになると思います」が、私には「もう限界です」の意味に聞こえた。

 

そうだろうなと思った。

 

去年も、一昨年も、きっと私が知らないだけでキングオブコント以外でも、勝てるチャンスをいくつも逃して

きて、人生もうまくいかなくて、そりゃ限界に決まっている。

 

だから2人が優勝してくれたらいいなと思った。優勝しなきゃ、あの2人はきっと負けたまま終わってしまうのだろうなと思った。そこがニューヨークやマヂラブとは違った。私はニューヨークが好きなんだけど、いい加減、社会不適合者の2人に、「成功」の王冠をかぶってほしくなった。

 

うけてくれと祈っていた。ほかのコンビがうけないでくれと祈っていた。

 

それでだ、あの1本目だ。

 

そんな祈りなど、一瞬でどうでもいいものになってしまった。

 

1本目をやり終えて、墨のメイクで体中を汚した2人が、ずっと、うまくいかない人生の中で、もがいて、限界で、それでも戦い続けてきた様と重なった。

 

2本目も、ほかのコンビの追随を許さないテーマの異色さと、仕上がりと、2人の人生が色濃く反映されていて、文句なしの優勝だった。

 

去年、「恋の尊さを伝えたくて」と水川かたまりが言った。

 

社会不適合者でも、見た目が良くなくても、借金があっても、離婚していても、人生が上手くいかなくても、それでも心から好きなものがあればそれを信じている人は素晴らしい。空気階段のコントはそういうメッセージをいつも含んでいるから、私は好きです。私にとってはそんなキングオブコントでした。

 

最後にすばらしい審査員の皆様があってこそ、伝説の回になったのだと思います。空気階段の優勝を決めたのが、このメンバーで本当に良かった。