虚無

記録用です。需要はありません。

窮鼠はチーズの夢を見る 感想2

前回のエントリーの続き。
今ヶ瀬が恭一を振る問題のシーンに取り掛かろうとしたら死ぬほど長くなりそうだったので、慌ててエントリーを分けました。このシーン一番泣いたかもしれない。

あなたじゃだめだ。あなたには僕じゃだめだし。本気で言ってんの?
お前がだめだって言うならだめなんだろ。終わりにしよう。
ずっと苦しかったろ。

で、でた~!メンヘラ女あるある、ヒステリックになった流れで突然別れを切り出すやつ~!
このとき恭一はなんだかんだ今ヶ瀬のことが好きなので、本気で言ってんの?とちゃんと引き止めるし、今ヶ瀬のことが好きだから、今ヶ瀬がこれ以上苦しむのは嫌で別れを決意する。
でもね、こういうヒステリックになったメンヘラには、本気で言ってんの?じゃなくて、俺は離れたくないとかがよかったと思います。(ふたりが上手くいく方法を一生懸命考え続けてたオタク)
あと、そもそも今ヶ瀬がヒス起こした原因でもある岡村ちゃんと仲良くすんな、いくら父親が死んで彼女が泣いてても、今ヶ瀬のことが好きなら抱きついてきても突き飛ばせよとは思いました。今ヶ瀬を愛していたのなら。

まあどちらにせよ、今ヶ瀬が恭一を信じられないのも、恭一が男女関係ではないと言いつつも他の女と仲良くなっちゃうのも、その人の性格だからしょうがないよね。しょうがない。

だからこのふたりはどこまでもすれ違う。床にうずくまってわんわん泣きじゃくる今ヶ瀬の気持ちが痛いくらい分かる。まだ好きなのに、そのすれ違いのせいで上手くいかない、恭一を信じられなくて、こういう結論にしか持っていけない自分が嫌で、どうにかしたくて、どうにかしてほしくて、でも今ヶ瀬も、恭一も、もうそういう性格だからどうにもならなくて、だからこれがふたりの正しい形なんじゃないかとすら思えてくる。別に特別悲劇的な恋愛の形なんかじゃなくて、こうするしかなかった、こうなるしかなかった、上手くやれなかった恋愛なんて、私たちの世界にいくらでもありふれてる。

海へ車を走らせる車内のシーン
これ自分も経験済なのでまじでゲロ吐きました。空気感がリアルすぎて吐いた。別れ話したあと海行くカップル、全員この映画と同じような会話してると思う(笑)

お前はさ、次に付き合うのはもっと情の深いタイプにしとけよ。もっとお前を大事にしてくれて、愛してくれるようなやつ。

なぜそれをお前がしてあげられない!!って言いたくなるんだけど、もうこれはほんとうに恭一の性格だからしょうがないとしか言い様がない。
価値観や性格を変えるのが難しいことなのはきっと誰でも知ってるのに、人はそれをいとも簡単に他人に強要することがある。だけど強制的にそれらを変えるのはたぶんほぼ不可能に近い。だから恭一は終わりにしたんだと思う。お前が無理なら、無理なんだろうと。俺はそれでも幸せだったけど、と。

ふたりで海を眺めるシーン
ここでは海を眺めてるだけで会話はないんだけど、実はこのあと、この作品の核にもなる例外トークをしていて、そのやり取りは最後に持ってこられてるんだけど、この構成が鬼のように好きで。敢えてネタバラシ的に、ふたりの会話のシーンについて書きます。

心底惚れるって全てにおいてその人が例外になっちゃうってことなんですよね。あなたには分からないか。
分かるよ。ごめん。ほんとにありがとう。

ここ、今ヶ瀬の例外の台詞にフォーカスが当てられがちだけど、私はそのあとの恭一の分かるよ。ごめん。ほんとにありがとう。でガンガンに泣いてしまった。
口下手だけど恭一の精一杯の告白だったんだろうな。
男はむりだった自分も今ヶ瀬は例外になった、だからその気持ちは分かるよ。幸せにしてあげられなくてごめん。こういう気持ちを俺にくれてほんとにありがとう。って意味だと思った。
もう振られたあともぜんぜん恭一今ヶ瀬のこと愛してる。とことん自分への愛情に鈍感な今ヶ瀬。

今ヶ瀬と別れたあとゲイバーに行くシーン
今ヶ瀬のことが忘れられなくてゲイバーとその帰り道で鼻水垂らしてぐずぐず泣いてる恭一。
これまでも恭一は今ヶ瀬のことを愛していたけど、それは無意識的なもので、ここが恭一が今ヶ瀬がいなくなって初めて自分が今ヶ瀬のことを好きだったことに気付くシーンだと思っていて。
人は失わないとそのものの大切さに気付けないなんてほんとバグだよね。でもそれでいいんだと思う。好きな人のために涙を流す行為が間違っているはずがない。惨めで滑稽だけど、それで合ってる。

今ヶ瀬との再会
僕を愛人にしてください。いらない。お前はもういらない。
求められたら流されていた恭一が、初めて自分の意思で拒むシーン。恭一、成長。今ヶ瀬を傷付けないためにいらないって言うんだけど、まぁ結局このあとめちゃくちゃセックスする。

セックスのあとのシーン
彼女と別れてください。いいよ。いつ?明日。嘘だ。一緒に暮らそう。

実質恭一からのプロポーズ。もうここで恭一は腹をくくっているのに、今ヶ瀬だけがまだ恭一との未来を信用できなくて、彼女と別れろって言ったり、別れるって言われたら別れなくていいって言ったり、じたばたする。
夜中に恭一の寝顔を見つめるいまがせ。
もう~~~このときの今ヶ瀬の気持ち、軽くメンヘラ入ってる女子なら全員死ぬほど分かると思う。プロポーズされたのに、それを望んだはずなのに、おしまいにしようって考えてる顔。案の定翌日家を出ていく今ヶ瀬。

遠くにある背中はいくらでも追いかけられるくせに、差し伸べられる手は掴めない。ずっと大好きでずっと追い掛けてきた人だからこそ、いざ自分と一緒にいることを選んだ途端に好きな人を自分という不幸に縛り付けちゃうみたいで怖くなって突き放す。メンヘラ女あるある。

最後の部屋のシーン
恭一は岡村ちゃんと別れて、今ヶ瀬を待つ選択をする。愛されないと人を愛せなかった恭一が、たった一人を愛すと決めた瞬間。恭一は大倉くんのビジュアルも相まって終始かっこいいんだけど、この恭一が作中で一番かっこよすぎて涙出ます。その頃一方今ヶ瀬は他の男に抱かれながら恭一のこと思い出しておえおえ泣いてます。救えないメンヘラ。でも前述したようにすごい気持ち分かる。怖いよね、7年も好きだった人を自分に縛り付けるのは。でも恭一は、あなたが幸せなら、幸せだったと思うよ。

恋愛の形はたぶんいくらでもあって、上手くいったり、上手くいかなかったりを繰り返す。それって当然のことで、そのなかで、ふたりの形を保てるバランスみたいなものを見つける必要がどうしてもあるんだろうなと。
今ヶ瀬が恭一の差し伸べた手を取れるようになれれば、このふたりは完全に順風満帆にはいかないとしても、少なくとも一緒にいられるのではないのかな。
一緒にいられたらそれでいいとよく言うけど、一緒にいるためにはお互い何かを捨てなくちゃいけなくて、努力もしなきゃいけない。シーソーみたいにどちらかが重すぎてもだめだし、軽すぎてもだめ。4回鑑賞してまじでどうにかこうにかふたりが幸せになる方法を考えていたモブオタクがたどり着いた結論です。恋愛ってまじで難しいですね。

おしまい